Beak stardust

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空に刻んだパラレログラム 感想

 

 部活モノの中でも、泥臭さが残りながらもご都合主義とリアルさをうまく盛り込んだ青春群像劇。熱い展開と苦しみながら足掻くキャラたちは過去と向き合い、相手に立ち向かうのはメイン・サブ関係なく、全員が物語を作っていることを認識させられた。

 本作品は架空のスポーツであるテレプシコーラを題材にしており、オラクルと呼ばれる魔法粒子を操りながら行う。いわば空中で行うバスケットボールみたいなもの(本編でもそんな感じで解説されている)でキャラたちの奮闘劇が繰り広げられる。

 

学生テレプシコーラの最高峰である大会の『ダンス・マカブル』に出場することが共通√での目標となり、出場できなかった世界線がヒロイン√、出場する世界線がTURE√になります。

ぶっちゃけ、ヒロイン√はどっこいどっこいな感じで可愛いところが見れるぐらい。

テレプシコーラを含めたヒロインとしての魅力が一番出ているのもTURE√であり、この作品の面白さが含まれているのが共通√からのTURE√です。以降、ネタバレしていきながら感想など。

 

・共通√

この共通√で、第二テレプシコーラ部の現状や第一テレプシコーラとの格差、それに伴う登場人物同士のいざこざなどが描かれます。そんな中で、『ダンス・マカブル』出場を目指して第二レテプシコーラ部での争いが始まり、それに向かって柚、里亜、玻璃の三人がEmptyOwlというチームが組み、試合に臨んでいきます。

試合中は各登場人物の背景やチーム結成における過去が回想にて入っていき、心理描写がかなり細かく描かれます。それにより敵チームなのにも関わらず応援したくなるというか、熱くなってしまうことが滅茶苦茶多かったです。

第二内での三試合は全部面白かったのですが、一番印象に残ったのは赤坂部長率いるOlviaとの試合。

昨年の親善試合で二年生の時の境先輩が率いるAeroPartsにボコボコに負けてしまい、戦意喪失してしまった赤坂部長、栗原先輩が、あえて一年生の悠未ちゃんをチームに入れたが、主人公チーム相手に劣勢になってしまった際に悠未ちゃんが「私のせいで第二最強のチームが負けてしまう」ってところで踏ん張り掛けるのがとてもいい。

三年生二人は内心から勝つことをあきらめており、それは相手が『初心者、元から競技に向いていない選手、黄金ルーキー』の組み合わせでも同様。しかし、最後まであきらめない悠未ちゃんが三年生二人の気持ちを動かし、最後は全力でぶつかってくるところが良かったです。

一方で、共通√最後では第二優勝候補の空先輩率いるCockRobinとの試合では第一での戦いに疲れたほたる先輩が里亜のケガにより、メンバーとして加わって試合を行うことになりますが、ここでチームとしての信頼関係がガバガバになってしまうところもGood.

試合に関しても、空先輩が化け物のように強い上に油断や隙が一切なくて第一ってどんなレベルなんだってぐらい。玻璃がエースでありながらも、最後の最後まで良いところがないところはメンタルが滅茶苦茶弱いという部分をしっかりと描いていて良かったです。試合中に吹っ切れて、チーム内での信頼関係が構築されていくのって滅茶苦茶好きなんですけど分かってくれる人いませんか?

 

・TRUE√

最高。何を取っても最高。

ただただ、面白い物語しかなかった。何が面白いって、全部ご都合主義なんですよ。

何をやっても最後にEnptyOwlが勝つのですが、そこに至るまでの過程が非常にたまらなく熱くて、チームとしての成長や選手としての成長、それに加えて敵チームとの関係性なども描かれていき、より感情移入しやすくなっています。

一番面白かったのは準決勝のAeroParts戦。文句なしに面白いです。この試合だけは5回ぐらい読んだ気がする。

最強のプレイヤー境先輩、それをサポートする攻守の天才である蓮先輩、守りを完全特化させた一年生のイーリスとの闘いは三人で攻めても、イーリスを崩せない絶望感や境先輩と蓮先輩の二人で相手を圧倒する攻撃力に対してどうしていくかという部分も面白い。

そして試合前にバラバラなチーム状況を治すための荒療治を行う歩。それはバラバラな状況を招いている玻璃の希望である歩の怪我を治すために『ダンス・マカブル』で優勝すること。それに対してあえて自らが親善試合にて敵として戦い、復帰できないほどのレベルの怪我をすることで希望を断ち切ることを選択する場面。ここも最高に熱かったです。

 

(ここから滅茶苦茶ネタばれ)

けど、やっぱりこの試合で一番良かったのは境先輩の存在。

境先輩は一度、試合中にアクシデントで主人公の歩の選手生命を終わらせていて、その場面が守備の際に自分が抜かされるわけがないと思って、リジェクト(ボールの所有している選手に対して、魔法粒子の塊を相手の体にぶつけて態勢を崩してボールを奪う)を仕掛けた際なんですよね。

この試合でも同じ場面が発生し、しかも相手が歩の妹である玻璃。

過去に歩を壊した感覚、想いを寄せていた人物からの聞こえないはずの声、相手を抜かしてはならないという気持ち、負けるわけがない自信。

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怪我が完治していない状態で試合に出続けて、全力を出し続け、負けたくない想いが引き起こしてしまう事故。今回、それがリジェクトをぶつけられる側ではなく、ぶつける側に起こってしまう。

それが、リジェクトを放つための形成させた魔法粒子の行き場を乱してしまって、魔法粒子の逆流を引き起こす。

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後半戦から痛み出してきた怪我が、逆流によって完全にぶっ壊れてしまう。

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それでも、境先輩は飛ぶことをやめずにただただ勝つために戦い続ける。それは紛れもなく、自らに課せた誓いのため。ここが、最高に胸熱。

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壊れたまま飛び続ける境先輩は試合が前後半15分ずつであるのにも関わらず、Vゴール方式(先に得点を取ったほうの勝ち)の延長戦を17分間戦い続け、敗北。世代最強の姿を最後まで見せつけた。この試合は誰もが満身創痍の中、ただひたすら戦い抜き、そして世代最強が選手生命を断ってしまった幕切れとなる。

これだけでも滅茶苦茶面白いのに、TURE√では境先輩がなぜここまで勝利にこだわり、天才でありながら努力を続けてきたかが描かれます。

歩の選手生命を終わらせてしまった際に、紅という歩と両想いだった幼馴染も事故で無くしてしまうのですが、境先輩はいないはずの彼女と約束をするのです。

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では何故、ここまで無茶してしまったのか?いくら歩を壊してしまった境先輩とはいえ、紅自身は境先輩が選手生命を断ってしまうところなんて願っていなかったはずなんですよね。

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誰よりも輝かしい才能を持ちながら、誰よりも努力してしまうことから、それが故に体が付いていかない。しかし、それでも全力で飛び、相手を打ち負かす。境先輩は少しでも早く約束を果たすために飛び続けた。それがきっと、恋だと気づかないまま。

TURE√ではこのように描かれていますが、ヒロインである柚√でも少しだけ描写があり、その際も『将来、自分と肩を並べる存在になるであろう選手を壊してしまったから、その分まで自分は飛び続けて勝利を重ねる義務がある』と言ったりするんですよね。

……ほんとこいつ、最高だなって思いませんか?

個人的にこのゲームで一番好きなキャラナンバーワンです。プレイした8割の人は境先輩が好きになること間違いない、そのくらい最高のキャラだと思ってます。

境先輩のことばかりになりましたが、TURE√はこの試合が一番面白いと思います。決勝は決勝で滅茶苦茶熱く、面白いのですが、少し尻すぼみ感出てしまって…。

けれども、ほたる先輩が完全覚醒した姿しながらも離脱してしまい、里亜が途中出場して最後に最高すぎるアシストしたり、玻璃が一年生ながら実力を発揮して黄金ルーキーってレベルじゃねーぞってぐらい奮闘する姿、そして圧倒的な成長スピードで全国クラスに成長を遂げた柚の怪物っぷりを見せつけたりと全員に見せ場があるのが良かったですね。

共通とTUREでこのゲームの9割は終わりです。

 

・ヒロイン√

『ダンス・マカブル』に出場できなかった世界線です。

全部√はそれぞれ2~3時間ぐらいで終わります。どちらかと言えば、イチャイチャするのがメインで話もそこまで重要なものはない気がします。

しかし、主人公の歩との関係性や各ヒロインである柚、里亜、ほたる先輩、玻璃に応じて関係してくるキャラとのエピソード、『ダンス・マカブル』に対する想いが分かってきます。

個人的にはキャラでいえば里亜が好きなのですが、ストーリー柚やほたる先輩が面白かったかなと。というより、ヒロインよりそのヒロインと歩と関係してくるキャラの過去が良かった。

柚ならば前述したとおり、境先輩の話です。柚と紅は瓜二つであることからそもそもストーリーが始まっていたりもするのですが、境先輩はそれを認めています。怪我を負っていながらそこまでプレーする境先輩を止めようと柚が奮闘し、最後は柚との勝負に自ら負けを認めて、境先輩が『ダンス・マカブル』を欠場する意思を固め、選手生命を守る形になります。

ほたる先輩であれば、蓮先輩の話。そもそも、蓮先輩、ほたる先輩、歩の三人は中学時代は同じチームであるいわば元仲間同士。そのため、蓮先輩が『ダンス・マカブル』にて優勝することで、歩やほたる先輩対しての口利きを行いたいこと、ほたる先輩と歩とまた一緒にプレーしたいと心で描く野望の様子。一方で、ほたる先輩は歩の武器であった相手から気配を消すプレーを磨くために、過酷な練習をさせてしまったことによる疲労の蓄積が、事故を引き起こしたという想いを引きずっていたり、ほたると蓮先輩が同じ孤児院出身であることから比べられる辛さなども描かれてます。

里亜だと紅と歩の話になります。どちらかといえば、幼馴染である三人の関係についてのことが多かったですね。里亜が玻璃を含めた幼馴染全員に気をかけ、全員の関係を壊さないようにしていたことがわかります。紅のことを考えてずっと一歩身を引いていた里亜ですが、歩が前を進むことを決心し、ツンデレを発揮しながら歩と恋人関係になる感じです。小さいころから里亜が玻璃を含めた幼馴染全員に気をかけ、全員の関係を壊さないようにしていたことがわかります。

玻璃だと完全に歩との話になります。血の繋がった兄妹でありながら、兄に対してずっと想いを寄せていた話で、それを歩は分かっていながらもずっと避け続けていたことが描かれます。精神的に弱い妹を兄、そして恋人として結ばれることでそれをサポートしていくという感じの展開になります。また、水ヶ原先輩率いるCadinalsの一員として苦悩する様子が大きく描かれていて、どちらかと言えば他の里亜√以外でのCadinals所属に所属する玻璃が目も当てられない結果になることに対して、補完する形になるお話です。

ヒロイン√での展開で大きく変わってくるのは境先輩の怪我、玻璃が移籍したCadinalsの結果です。

この辺はどちらかと言えば、おまけみたいな感じで、ある程度はTURE√で描かれるため、そこまで気にしないほうが良いのかもしれませんね。

 

・まとめ

境先輩~~~~~って感じ。最高です。

 

歩は各√ENDで選手として復帰したり、指導者としての道を歩んだりするのですが、そこ自体にはあまり意味は成していないのかなと思います。ただ、少しでも希望があるぐらいならば、全部なくなってしまえばいいという考えの持ち主だからこそ、あの準決勝前の話が滅茶苦茶面白いです。

他には男性キャラ…境先輩や蓮先輩が良いキャラしてるんですよね。他にも第二の男子組も良い面子が居ますし、ぶっちゃけ登場人物すべてに魅力があり、余すところなく楽しめるのがこのゲームだと思います。それでも、一番魅力的だったのは境先輩でした。

エロゲなのに一番魅力あるキャラが男性キャラでしかも敵キャラなのはどうなのか、という部分もありますが、それでもストーリーは滅茶苦茶面白いです。

一方でウグイスカグラさん特有らしいのですが、誤字脱字が多いことやシステム面で若干物足りない部分があります。それでも、ストーリーだけのために買う価値は全然あるとは思います。

色んなサイトの感想を見させてもらったのですが、言及していないところがあって、大会に臨むチーム全部が万全でない状態のままなんですよね。

ある意味、チーム競技をやっていれば普通なんですけど、完全なチームはどこにもありません。

だからこそ、ドラマというものが生まれるんだと思います。それを表現した物語がこの空に刻んだパラレログラムという作品でもあるのではないかと。

確かにご都合主義ですし、ワンパターンでもあります。でも、劇的なドラマを生んだ現実の物語も、神がそう願ったかのような展開が起きてしまったからこそだと思います。

何が言いたいかって、里亜が可愛かったし、境先輩のアフターストーリーが見たい。

やっぱり青春系のエロゲは最高ですね。

みなさんも出来たら中古でいいんでプレイしてください。そして感想言い合いましょう。